1.斑状歯*の流行と原因調査
1910年代、米国の歯科医師マッケイとブラックはコロラド州を中心とする中西部一帯における斑状歯の流行を報告した。
 斑状歯の発生は、
1)特定の水を利用していた者に限られていること、
2)そこで生まれ育ったもののみに見られること、
3)永久歯の萌出が終わってからの転入者には見られないことが知られるようになり、飲料水中のなんらかの物質が原因であろうと推測された。
 その後1930年代になって、米国のチャーチルは斑状歯の流行している地域の水を分析し、高濃度のフッ素を検出した。ここから、斑状歯の原因はフッ素であることが明らかになり、これ以降、歯状歯は「歯のフッ素症*」と呼ばれるようになった。
 また、歯のフッ素症の流行地域には、むし歯が少ないことも分かってきた。

2.飲料水中フッ素濃度と歯のフッ素症流行およびむし歯有病状況  米国国立公衆衛生局のディーンは、歯のフッ素症とむし歯有病状況について、飲料水中フッ素濃度の異なる21地域の12-14歳の約7,400名を対象に調査した。
 その結果、飲料水中フッ素濃度が0.9ppm**までの地区では歯のフッ素症の流行はほとんどみられないこと、1.2ppmを越えるあたりからマイルドな歯のフッ素症が発現し始め、1.8ppm以上になると誰が見てもそれと気付く中等度以上の歯のフッ素症が発現していることがわかった。
 また、むし歯有病状況は、飲料水中フッ素濃度が0ppmから1.2ppmの範囲で急勾配で減少し、それ以上のフッ素濃度になると、減少傾向は緩慢になっていった。(上図)
 こうしたことから、「飲料水中フッ素濃度が1ppm以下であれば歯のフッ素症の流行がなく、また、1ppm前後のフッ素を含む飲料水は、むし歯の発生を大きく抑制する」という結論が出された。
 ここに現状のむし歯が半分以下になるという、むし歯予防の方法が自然の中から発見された。
 これらの飲料水中フッ素濃度と歯のフッ素症、むし歯の関係については、日本でも同様の結果が確認されている。
(子供の歯を守る会実行委員 八木 稔)

* その特徴をあげると、エナメル質に境界不明瞭の白斑、白濁、白い水平縞があらわれる。マイルドなものは、専門家でないと識別が困難である。中等度になると歯面全体にわたってチョーク様に白濁する。これに小陥凹が加わることがある。小陥凹部には外来性の色素が沈着し、褐色-黒色を呈することがある。う蝕が少ない。
** ppmとは「100万分の1」の単位。例えば、ある物質が1リットル中に1mg含まれているということ。



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